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地域貢献の取り組み ー かむり塾 ー(幸生会)

地域貢献の取り組み取材の記念すべき第一弾は社会福祉法人 幸生会、特別養護老人ホーム泉クラシックさんに行ってまいりました!

法人概要    社会福祉法人 幸生会   仙台市青葉区栗生1丁目25−1   

                          http://www.f-kouseikai.or.jp/index.htmlお答えいただいた方(写真右より)                              

泉クラシック施設長・業務執行理事 鴇田氏、寺岡すいせん保育所 副施設長・業務執行理事 泉氏、事務員 武内氏、  

ケアワーカー菊池氏

インタビュアー 宮城県経営協 運営広報委員会

 

「かむり塾について」

 

インタビュアー

→では、早速「かむり塾」の事業概要についてお教えいただきますか?

 

鴇田施設長

→地域の小学生に対して、施設の会議室を利用し塾を週2回実施しています。水曜日は15:00~17:00、金曜日は16:00~18:00の時間です。

対象の子供達は、小学校まで、施設職員が車で迎えに行きます。送迎は基本的に業務員が行いますが、状況によっては他の職員が行うこともあります。終了後は暗くなる時間なので防犯の意味で直接家庭へお送りしています。

 

インタビュアー

→対象の学年はあるのでしょうか?

 

武内氏

→基本的に4年生から6年生が対象です。現在在籍の塾生は9名。水曜日が8名。金曜日が7名です。カリキュラムもそのように分けています。

塾利用開始時に申込書を提出してもらい、記載内容で共稼ぎや一人親家庭という程度は分かりますが、世帯収入等の細かい家庭の事情などは聞いていません。申込書に記載されている申込理由の代表的なものは「宿題を子供に聞かれても答えられないから」

「(子供が)算数が苦手だから」「働いているため宿題を見守れないから」といった内容です。

 

インタビュアー

→カリキュラムがあるのはすごいですね。職員さんで考えて作ったのでしょうか?

 

武内氏

→講師を依頼している方が3名いらっしゃり、全員地元在住の元教員の方です。(男性2名、女性1名)。その中から塾長としてボランティアリーダーを佐々木氏(校長経験者)にお願いし  ており、講師の先生方がカリキュラムを全て作っています。 

             

インタビュアー

→ボランティアの方が地元の方でなおかつ運営の主体も担っていただくのは理想の形ですね。

 

鴇田施設長

→講師をお願いすることとなった経緯として、まず、地元在住の大学教授にアドバイザーになってもらいました。その後、協力いただけることになった先生3名が話し合ってローテーションを組んでいて、年間計画やカリキュラムなども全て先生方にお任せしているので、施設側の負担感はほとんどありません。

〇塾の一日の流れ○

 ・講師から事前に資料準備の指示を受け、事務所でコピー等教材の準備

 ・小学校へ迎えに行き子供を塾へ連れてくる

 ・塾開始 (塾の進行は講師に全ておまかせ)

 ・途中何度か休憩が入る(卓球台があるので卓球もする)

 ・職員は塾に常駐する。

特に決められた業務があるわけではないが、管理責任という意味合いでも常駐するようにしている。普段は、塾の記録・生徒や講師とのコミュニケーション・教材等の準備などを行っている。

 ・4,5,6年生が全員一緒に会議室で講義を受ける。

 ・一コマ目は宿題。講師は添削や指導を行う。

 ・二コマ目以降は学校の授業内容を受けて教科書をもとに授業。

 ・外で散策することや野外炊飯、季節に合わせた料理教室、拾ってきた石に絵を描いたりと勉強以外の内容も盛り込んでいる。

 ・講師は連絡帳に生徒の様子を記入。

  ※連絡帳は毎回記入して保護者とやりとりしている。講師のコメントに保護者が自宅の様子や意見などを記入してくれている。

 ・終了後、各塾生の自宅まで直接送る。

 ・終了

 

                       カリキュラム参考

 

    

 

 インタビュアー

→先ほど対象が4年生から6年生までとおっしゃっていましたが、募集はどのようにしているのでしょうか?

 

菊池氏

→近隣地域への新聞折り込みチラシで募集しています。3年目を迎えたので、学校側もかむり塾のことを把握してくれています。保護者等に対して、特に講師の経歴などは公表していませんが、地域の方なのでなんとなく把握している方もおられます。小学校との連携窓口は教頭先生ですが、塾長の後輩であり、先輩がやっている事業であるため信頼してくれています。小学校からは行事等の予定をもらい、塾の予定と調整できています。

 

鴇田施設長

→小学校との連携は大切です。学校側から見た個々の生徒の変化を聞くことができ、学校の動きとあまりにかけ離れたことをするわけには行かないので、計画や方針などを確認しておくことも必要だと思います。

武内氏

→塾の評価として保護者にアンケートをとったことがあります。以下アンケートの内容

・塾に入って良かったこと 

「宿題や家庭学習をする時間がしっかりとれた。」

「学校からまっすぐ自宅に帰るという生活から、塾へ通うことが加わり、生活にメリハリがついた。」「学習する意欲が出た。」「勉強する楽しみができた。」

「(塾で)宿題を終えてくるので充実している。」「楽しそうに帰ってくる。」

 

インタビュアー

→では、塾長にお話をお伺いする前に、鴇田施設長から無料学習支援を行う事となった経緯についてお教えください。職員のみなさんには取り組んでみての変化を教えていただければ。

 

鴇田施設長

→この地域は、昔は工場がいくつもあって繁栄していましたが、工場がなくなってからは人口が減り以前の繁栄が見られなくなって過疎も進んでいました。そこで法人としてこの地域を再生したいと考え、福祉事業を展開することにしたのがきっかけです。その後、せっかくなので子どもたちの交流の場を作り、根白石地区の地域再生、活気を取り戻すために子供たちの力も必要と考えたのが始まりです。この地域の子供たちは、バスの便数が少ない上、バス停も遠く、塾に通うのが大変という厳しい学習環境があったのでそれを補うという一方で、最近は田舎でも子供たちはお年寄りたちと一緒に過ごしておらず、共働き家庭も増えていて、両親が帰宅するまでの間子供たちをお預かりして何かをしたいと考えスタートしたのが「かむり塾」です。

 

菊池氏

→この事業を行ったことで、学校との交流ができるので、運動会や夏祭りなどへ行きやすくなりました。※鹿踊・剣舞を塾生達が施設で披露してくれたり、お祭りの時に塾生達が踊る様子を利用者さんと一緒に見に行ったりと、地域との交流が自然と生まれるようになった点はとても良かったと思います。

※鹿踊・剣舞(ししおどり・けんばい)

県指定無形民俗文化財 剣舞は慶安2(1649)、鹿踊は寛政4(1792)に旧福岡村に伝えらえたとされます。2つの舞いは不即不離の関係にあり1対として伝承されてきました。かつては、お盆の先祖供養に各戸を踊り歩いたほか、村祭りなどでも踊られました。根白石地域で開催される祭りやイベントで披露されている。

 

インタビュアー

→それでは最後に塾長からお話をお伺いしたいと思います。この取組みに携わることになった経緯と3年経過してみての感想をお聞かせください。

 

             

 

塾長

→私は福岡学区出身で、現役の教師を引退してからは児童館で勤務していました。かむり塾の主旨は金森理事長から直接お聞きし、地域にお世話になっていて、児童館勤務も終わるという時期でしたので、自分ができる範囲で力になれることがあればと引き受けました。

学校でやっていることだけに限らず、塾生が学習する意欲や楽しみを見出してもらえるような内容とし、リラックスした雰囲気で進めるようにしています。

学校ではやっていないことをやりたいと考えて実践してきました。その点は達成できていると思います。自分自身も学校や児童館とは別の子どもの姿を見て勉強になる部分があります。子供にとってはあくまでも学校が主なので、学校や施設の行事と調整して、子どもの負担にならないように心掛けています。ここは学習支援が主な目的ですが、おじいちゃんおばあちゃんへの接し方や家庭のありかたの部分についても触れてあげたいと思っています。

おじいちゃんおばあちゃんは自分と同じ世代なので、「こうしてあげるとおじいちゃん喜ぶぞ。」などと声をかけています。いずれ自分にも帰ってくることなので(笑)

ですので、子ども達にはマナーを大切にするように指導します。施設を借りて活動しているわけなので、施設を利用する時のマナーや職員達などへの挨拶などを伝えるようにしていて、保護者にもプリントを通して伝えています。

かむり塾は家庭支援の意味合いをもって始めたかとは思いますが、始めてみると子ども達を「人」として育てることにもなっているような気がします。学校や家庭とは別の形で「人として大切なもの」を伝えられればと思っています。

 

                       学習の様子 

かむり川で拾って来た石に絵を描くワークショップ                宿題の計算問題を解いていました

   

編集後記

子供達が学年を超えて、和気藹々と楽しみながら勉強していたのがとても印象的。主に施設のハードの資源活用と、地域の人的資源の活用を組み合わせた地域貢献の取組みで、ボランティアが企画運営を行っている為、無理なく続けられている印象を受けた。みなさんの地域にも多くの人的資源はあるはず。社会福祉法人の責務として、地域資源を有機的に結びつけて、地域のニーズに応える地域貢献の取り組みが広がっていくことを期待したい。

 

公益的な取り組み事例(幸生会・かむり塾)

2018.09.24